一人暮らしをはじめて、子どものときに理想だった部屋をつくっています。最近は、部屋を羊だらけにする「ひつじ舎」化計画を進めてます( 笑)。
(渡邊佳辰)

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 住処って言葉、好きですね。制作って生活とつながってると思っていて、この場所で自分の作品とか価値観を育んでいる気がするんです。日々の、お洗濯や料理を丁寧にすることや、部屋に置く小物や着る服をしっかり選ぶことといったように「生活」を丁寧に過ごすと、私の場合、自分で染めたテキスタイルのカバンやブローチを制作するときに、生活の中で感じた感覚とか気分が反映される気がします。なので、大学の課題が忙しいからといって、部屋はぐちゃぐちゃとか、ご飯はコンビニ弁当っていうふうに「制作」と「生活」をなるべく切り離したくないんです。

 大学に入って一人暮らしをはじめてから、「子ども部屋」をテーマに部屋づくりをしています。自分でつくったぬいぐるみを窓に置いたり、本棚には絵本があったりして、自分が子どものときに理想だった部屋を、今つくってるっていう感じですね。最近は、部屋を羊だらけの「ひつじ舎」化計画を進めています(笑)。毎日をすごしていく中で「いつも丁寧に暮らす」っていうことが1番難しいと思うので、制作も、食事や家具選びなんかも、そこに人生観が反映されているんだと思って、しっかり向き合っていきたいです。

 部屋で制作することも多いので、制作で悩んで手が止まったときなんかは、キッチンで料理や洗い物をしながら、カウンター越しに作品をよくみつめています。制作をしている居間とキッチンの距離が、作品との客観的な距離をつくってくれるんです。ちなみに、料理はつくったら満足しちゃうタイプです。誰かに食べてもらうために料理をつくりたいです(笑)。友だちを呼んで、ご飯を食べてもらうときは、テーブルもひとつのキャンバスだと思って料理を並べます。料理がインテリアの一部になる感覚です。

 制作や生活のなかで、私の色使いの原点になっているのは、絵本です。卒業制作展で羊毛を使って桃色の羊をつくったときも、絵本の中の桃色のやさしい色使いに影響を受けました。絵本は、小さいころ母に読んでもらったものばかりで、ずっと大切にしています。母がどこでどんな抑揚をつけて読んだかも全部記憶に残っているくらい。小さい頃から気に入ったものは、今でもずっと好きですね。

 制作するときに1番大切にしていることは、自分が使いたいと思えるようなものをつくるということです。そのために、自分のお気に入りのブローチなんかを眺めて、「自分はなぜこれが好きなのか」っていうことを探る時間を大事にしています。身の回りの物の配置とか、布の質感とかも自分の好みの要素になっていますね。

 今までは、デザイン要素の強い商品をつくって、ギャラリーや展示会などで販売してきたのですが、これからはアートとして、使わないときも飾って楽しめるような商品も増やしていきたいです。今は、鯉のクラッチバックを試作しています。ギャラリーに展示するときには、天井から鯉をぶら下げたいなーなんで妄想中です(笑)。

わたなべ かしん / 空間デザイン領域4年生


取材を終えて

 戸棚に入っていた可愛いガラスのコップについて聞くと、「実はそれ、瓶なんです。友だちが家にたくさん来たときに、ガラス瓶のフタを外してコップとして使ってました。こういうアイディアがはたらくときは、女子力よりも主婦力を磨いてる気がしてなりません(笑)。」とのこと。
コップとして使わないときは、レモンのシロップ漬けなどをつくっているそうです。家計のことも考えつつ、料理のアイディアまで持っているなんて、恐るべき主婦力。私も、一人暮らしをしている者として見習いたいと思いました。(取材日:2015年2月)

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