恥を捨てられるかどうかで、表現の幅ってけっこう違うと思います。
(有村泰志)

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 大学に入ってから、制作にSNSは欠かせないです。Facebook はネット用のポートフォリオ、Twitter はアイデアのメモ帳みたいに使ってます。人の反応がわかるメモ帳って感じですね。
 例えば授業の課題制作とかで、琵琶湖のポスターをつくりたいときに、ツイログを使って「琵琶湖」を検索すると、自分のツイートで琵琶湖ってつぶやいたことが出てくるんですよ。だから、思いついた課題のアイデアとか、そのときには関係なくてもこれから使えるかもって思ったアイデアをTwitterにつぶやいてます。あと、人に見られてるっていうのがあるから、だれが見てもわかるように意識して書いています。

 進級展に出品した、モーションタイポグラフィの作品は、昔の自分の「『あ』の中に『め』がはいってる!」っていうツイートを見つけて、それをもとにつくりました。

 僕が制作するときの意欲には、まず人に自慢したいという思いでつくってるんです。だから、FacebookとかTwitterといった自慢する場がなかったら困りますね(笑)。
 高校生のときは、アピールすることがイタイっていう感覚もありました。でも大学に入ってからは、そういうの気にしなくてもええやんって吹っ切れましたね。作品をつくるときに自分からアピールしていかないと損やなって思って、行動するようになりました。
 SNSでアピールすることで、自分の意欲も高められるし、周りにも少なからず影響を与えられるし。なにより、地元の友だちとか、芸大以外の人から反応をもらえるのがありがたいです。

 合評で、ポスターの課題とかを先生や同級生に説明しながら発表するんですけど、実際のポスターは説明とかなしで世の中に貼られるわけなので、説明せずに周りの人の反応が見たいですね。
 よくやるのは、地元の友だちのLINEグループに課題でつくったポスターの画像とかをなんの脈絡も説明もなくバーンと出して、それに対して友だちが「これええやん!」って反応してくれたら勝ちやなって思ったり、逆に「何コレ?」みたいになったらやり直したりして、そういう純粋な意見を大事にしています。

 TwitterやFacebookでの自慢の延長線というか、就職活動で自己アピールするアイテムとして、最近、雑誌みたいなポートフォリオをつくりました。テーマは、「the セルフマネージメント」です。一番見てもらいたいポスター作品を「ポスター特集」として紹介したり、広告賞の受賞作品について、自分で考えた質問に自分で答えるっていう自作自演のインタビュー記事をつくったりしました(笑)。表紙には、「あたらしい たのしい ありむらたいし」っていう、初めて会った人にも名前を覚えてもらえるようなキャッチコピーを入れています。
 これをつくるときに、恥を完全に捨てることにしました(笑)。こういうときに恥を捨てられるかどうかで、けっこう表現の幅が違ってくると思います。

ありむら たいし/メディアデザイン領域4年生


取材を終えて

有村くんのデザインしたポスターや冊子は、見た人を楽しい気分にさせてくれるアイデアがたくさんつまっていて、どれも個性的なものばかりです。自慢やアピールを恥ずかしいと思う気持ち=「枷(かせ)」を外すことで、自分はどんなふうに人に作品を見てもらいたいのか、本当につくりたいものは何なのかを発見・発信できるようになるのだと思いました。(取材日:2015年2月)