「これもアート作品?」新しい価値観に出会った感じ。それまではアートって絵とか彫刻のことだけだと思っていましたから。
(風早信太)

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 高校は普通科だったんですが、3年生の夏、進路が何も決まってなかった僕に、美術の先生が、奈良美智大竹伸朗といったアーティストが紹介されたテレビ番組を見せてくれました。そのなかでも、芸大に入ったのにすぐ休学して北海道に行ってしまった大竹伸朗の姿がキラキラして見えました。直感的にかっこいいと思ってしまったんですね。それまでアートなんて全く知らなかったんですが、それがきっかけでなんとなく芸大を受験してみようと思いました。
 成安では、総合領域の出稽古の授業で出会った「写真」にのめり込んだ時期もありましたが、2年生から4年生まで「キャンパスが美術館」のお手伝いをさせてもらったことが、その後につながる大きな出来事だったと思います。特に2年生の夏の、現代美術作家・堀尾貞治さんのワークショップが強く印象に残っています。廃材で家をつくってしまったり、大学内に水をまいてまわったり…「これもアート作品?」というような新しい価値観に出会った感じです。それまではアートって絵とか彫刻のことだけだと思ってましたから。こうでなくてはいけない、というものが軽くなったというか、自分を肯定してくれるような、そんなすごいエネルギーをアーティストから感じました。
※出稽古の授業:他領域の専門科目を履修することができる総合領域独自のカリキュラム。通称、出稽古。

 同時に、アーティストだけではなくて、「キャンパスが美術館」スタッフのみなさんのようなアーティストをサポートする側も必要なんだということに気づきました。いろいろな展覧会やイベントに関わって、企画・運営する側の喜びを教えていただきましたね。

SEIAN ARTS ATTENTION vol.5「SITES ふうこうのありか」 国谷隆志展「35°6’29.15″N 135°54’9.63″E」会場にて(「キャンパスが美術館」、2013年10月)

 その後、京都にある現代美術のギャラリーで1年半ほどアルバイトをさせていただく機会にも恵まれました。新進気鋭の作家たちの作品搬入出の補助など、第一線で活躍するアーティストと間近で接することで、より広い視野を持つことができました。

 総合領域の卒業制作は、平面や立体の作品ではなく、プロジェクトの形になることが多いんですが、僕は展覧会を企画すること自体を卒業制作にしようと考えました。ちょうど領域の違う同級生たち4人と、卒業制作や美術教育、アートシーンに対する思いを最後にぶつけてみたい、というような話をしていたので、それを展覧会として立ち上げました。
 メンバーとともに企画の説明の文章を書いたり、展示の内容を考えたりしました。キュレーターというよりも監修というか、グループの代表というような感じで動いていく中で、さまざまな人の協力もあり、何とか卒業制作展が行われる京都市美術館の会場と、別に準備した会場とを中継映像で結ぶという趣向の展覧会として、開催することができました。
※キュレーター:展覧会の企画・構成・運営を行う人。美術館の学芸員のこと。

風早くんの企画した「浮上するー沈殿から・疎外へ・沈黙のままー」展の会場風景(京都市下京区丹波街道町、2014年2月)

 ですが、これに関しては未熟な部分も多く、反省点だらけになりました。「作品について、主催者側が押し付けるものではないのではないか」、「作品に純粋に接してもらうにはどうしたらよいだろうか」など自問自答したり、とにかく迷いはつきませんでした。それもあって、今はもっともっと美術に関して、勉強したいという気持ちが強いです。将来の夢はまだはっきりしてませんが、卒業して、入学した時よりも学びたい気持ちでいっぱいになっている今日この頃です。

かぜはや しんた/総合領域4年生


取材を終えて

考えすぎて疲れた夜は、ゾンビ映画やホラー映画をつけっぱなしにして、ビールとチョコレートが最高の組み合わせなんだとか。『フィッシャー・キング』『パルプ・フィクション』、北野武作品と、好きな映画は何回もみるタイプ。(取材日:2015年2月)